神田外語大学の村田裕司様、寺澤岳生様にIRQuA導入の経緯や効果を伺いました。

神田外語大学の沿革と概要

神田外語大学は、1957年に東京・神田で設立したセントラル英会話学校を起源として、1987年に千葉県千葉市幕張に発足いたしました。
「言葉は世界をつなぐ平和の礎」を建学の理念に、世界の懸け橋となる人材を育成しています。これまでに多くの人材を輩出し卒業生は国内外の幅広い分野で活躍しています。
現在では、キャンパスに外国語学部とグローバル・リベラルアーツ学部の2つの学部と大学院言語科学研究科を置き、4,000名を超える学部学生と大学院生が、世界で活躍すべく学びを深めています。

神田外語大学 幕張キャンパス
学内におけるIRの体制と役割

本学の教学IR部門は学長室にあって、職員2名で運営しています。私たち2人は2020年4月に着任しまして、村田は大学改革室との兼任、寺澤はIR推進チームの専任となっています。
学長室IR推進チームは、学長(大学執行部)直属の組織として、大学運営上の意思決定や計画立案を、情報収集・提供、大学機関調査、教学データ分析の面からサポートしています。

学長室シニアマネージャー 村田裕司様
学長室チーフ 寺澤岳生様
予算や体制の制約から大規模な統合データウェアハウスの導入はハードルが高かった

教学IRでは、大学の意思決定を支援するため組織活動を示す情報を機能的に蓄積し、それに基づく検索や分析を行う必要がありますが、そのためには、大学の規模によらず、過去から現在までの教学データを蓄積しておくことが不可欠となっています。
先行している大規模大学では、費用を掛けて経年でデータを保管・管理できるデータウェアハウス(様々な分析用のデータを蓄積するための巨大なデータベース)を構築導入していますが、私たちも見積もりを取得してみたところ、本学のような中小規模の大学では価格的に購入は難しい状況でした。

また、大規模な特注システムの構築は失敗のリスクが高く、実際にそのような事例を見聞していました。たとえうまく構築できた場合でも、追加開発にはさらなる費用がかかります。
現代は環境変化が激しく、機能開発を継続的に行わないと時代に追いつけなくなります。機能開発が進むと、各企業は互いの良い点を模倣するため、最終的にはどの特注システムも似た機能を持つことになると考えていました。
各大学のノウハウを集約し、ベストプラクティスに基づいてシステムを開発し、継続的に改善し新機能を追加していく。そんなパッケージシステムを探していた時、ちょうどIRQuAに出会いました。
2021年に参加した研修会でIRI Lab.とIRQuAの存在を知り、価格が手頃で少人数の体制でも運用可能だと感じました。リリース前ではありましたが、IRQuA開発元のヴェルク株式会社様にお声がけしてテストユーザーとして開発プロジェクトに参画させていただくこととなり、2022年春の正式リリースと同時に導入を決定しました。

執行部のメンバーにもIRQuAアカウントを配布して活用

2022年初夏には、新しい年度のデータもアップロードし、13名の大学執行部へのアカウント配布も行い本格的な利用を開始いたしました。
初めは、毎月の執行部会議とは別に時間を設けて、IRダッシュボードの操作と機能についての説明会を実施しました。
操作についてはマニュアルだけでなく、可視化された指標がどのような考えに基づいてグラフ化されているかも合わせて説明を行いました。
複数の大学で意見を出し合って開発したダッシュボードシステムですので、よく使う指標やグラフが過不足なくバランスよく盛り込まれていて、快適に利用できています。

IRQuAを元に「教学IR健診」を作成し理事長や学長に報告

執行部会議で、学長からどのグラフを注視していけば良いのかという問い掛けなどもあり、教職員が受診する健康診断の結果票からヒントを得て、3ページ前後の「教学IR健診結果票」という大学機関調査サマリーを作成しました。
グラフの変化から課題を抽出することはもちろん重要ですが、問題がない状態を継続的に確認することも同様に重要だと考えています。ただ、問題のない指標は議論が起こりにくく、つまらないグラフになりがちです。そこで、受け止め方を変えられる方法を考えた時に、連想したのが健康診断でした。健康診断では、肝臓の数値やコレステロール値など、問題のないデータを確認して安心しますよね。同様に、IRでも問題のない指標を継続的に確認しつつ、変化が大きかった指標については更に詳細に分析するようにしています。
また、理事長からのアイデアでサマリーの内容を5分程度の動画で収録し大学内の教職員向けグループウェアで情報を共有をしました。

執行部会議ではその場でデータの深掘り分析が可能に

IR部門のスタッフの立場としては、以前は大学執行部へのレポーティングのためのデータ処理を手作業で行っていましたが、よく使う定型的な可視化はIRQuAで自動化でき、空いた時間で毎年の主要な指標やグラフを読み解くことや考えることに時間を費やすことができるようになりました。Excelでの手作業がなくなったことで、人為的なミスも減らすことができたのではないかと思います。
また、執行部会議で確認したい事項がある場合に、以前は一度IR部門が持ち帰って、後日にサポーティングする必要がありましたが、今はその場ですぐに深掘り調査ができます。確認したいときにすぐに見て議論ができるという即時性のメリットもあるのではないかと思います。
何より、専任1名、兼任1名の職員2名のみという体制で運用できているということが非常に大きいです。

学内でデータに基づいた議論やコミュニケーションが活発になった

大学執行部会議に参加しているメンバーから「何かを判断するときにデータに基づいて意見を交換する習慣づけの土台ができた」というようなコメントがありました。この「ベースができた」ということがとても大切だと。
データをベースに議論やコミュニケーションが生まれるようになったということが、とても大きいと実感しています。
その他にも、「以前は見つけられなかったようなデータもすぐに見つけられるようになった」「各部署のデータを集約して参照できるようになった」「議論の内容を共有できることや、普段見ることが少ない自分の専門外・担当外のデータにも関心を持つことや、相互理解につながると思う」という意見などもありました。
活用の幅はこれからですが、システムを導入した後も継続して使用してもらえるように、また、IRQuAはパッケージ・システムですので、複数の大学からの意見が、毎年の機能アップにつながることからも、新機能を学内の利用ユーザーに紹介しつつ、便利に感じていただけるように努めていきたいと思っています。

IRQuA導入をきっかけに学内の様々な指標の定義を再整理

IRQuAの導入にあたって、「様々な指標に関する学内の定義がいかにバラバラだったかということに気づいた」ということがありました。指標毎の定義を再整理することで認識を見直すことができたので、新たに増えた課題というよりは、むしろ本来は既に実施しておくべきだったことに気づくことができたというような位置づけになるかと思います。

他大学も巻き込んでIRQuAユーザー同士の意見交換を活性化させたい

学長室の役割は、基本的には学長、執行部のサポート役ですが、将来的には分権型IRの推進にも寄与できればと考えています。
学内の各部署で分析を行う上では信頼できる最新のデータが必要になりますが、本学のような中小規模の大学ではデータウェアハウスの構築は難しいと考えています。そこで考えているのは、IRQuAをデータ基盤として利用することで、IRQuAに蓄積したデータの管理方法を構築して、学内のリクエストに対してデータを提供するなどの取り組みを試していきたいと考えています。

また、IRQuAに関しては、今後はIRQuAを利用している他大学の方々とも、ぜひ情報交換や意見交換を行わせていただければと考えています。ユーザー同士で利活用の方法や新しいアイデアを出し合って、新機能の開発や既存機能の改善など、提案していけるとよいのではないかと思います。
何かありましたら、遠慮なくご連絡いただけると、大変嬉しく思います。

IRQuA導入の効果を語る寺澤様

神田外語大学におけるIRQuA導入のポイント

  • IRQuAならではの大規模な予算取りを必要としない価格帯により、中小規模の大学でも費用対効果の高さを実感。
  • 執行部から現場までデータに立脚した学内コミュニケーション環境を醸成。
  • 学内関係者にダッシュボードを開放して終わりではなく、IR部門が積極的にレポーティングを行うことでデータへの関心を引きつける取り組みを実践。