はじめに

今年もMJIR(大学情報・機関調査研究集会)の季節が近づいてきました。
第15回にあたるMJIR2026は、2026年11月7日(土)から8日(日)にかけて、北海道千歳市の公立千歳科学技術大学で開催されます。あわせて、11月13日(金)から14日(土)にはオンラインのみの日程も予定されています。

参加をご検討中の方もいらっしゃることと思います。一方で、「どのような発表が行われる場なのか、いまひとつ掴めていない」という方や、「久しぶりの参加なので、最近の動向を知っておきたい」という方もおられるかもしれません。

前回のMJIR2025の論文集は、すでにJ-STAGEで公開されており、どなたでもご覧いただけます。本記事では、この論文集に収録された発表を俯瞰し、いま大学IRの現場でどのようなテーマが語られているのかを眺めてみたいと思います。当日の議論を追うための下準備として、お読みいただければ幸いです。

前回のMJIR2025について

MJIR(Meeting on Japanese Institutional Research)は、大学における情報の活用や機関調査をテーマとした研究集会です。前回の第14回は、2025年11月7日から9日にかけて、神奈川県相模原市の麻布大学で開催されました。

ヴェルク株式会社もこれまで出展企業として参加してまいりました。過去の出展の様子は、以下の記事でご報告しています。
「MJIR2024(第13回 大学情報・機関調査研究集会)にIRQuAを資料出展」
「IRQuA 出展報告 - MJIR2023(第12回 大学情報・機関調査研究集会)」

MJIR2025の論文集には、巻頭特集を含めて37本の発表が収録されています。本記事では巻頭特集を除いた36本を対象としました。集会の詳細については、以下のサイトもあわせてご参照ください。
MJIR公式サイト
MJIR2026 Webサイト

発表論文36本を俯瞰する

分析の進め方

J-STAGEで公開されている36本のタイトル・副題・抄録を対象に、頻出するキーワードの集計と、用いられている手段の分類を行いました。今回、分類やキーワードの抽出にあたっては、生成AIを活用しています。(なお、以下の分類は本記事のために整理したもので、公式な区分ではありません。分析は抄録を中心に行い、判断が難しいものについては本文も確認しましたが、抄録に記載のない手法が本文で用いられている場合もあるため、以下の数字は目安としてご覧ください。)

Step 1: キーワードから見る全体像

まず、36本のタイトル・副題・抄録に登場する語を集計し、複数の論文に共通して現れるキーワードを抽出しました。
以下のワードクラウドでは、文字の大きさが、そのキーワードが登場した論文の本数に対応しています。

MJIR2025発表論文36本のキーワードを可視化したワードクラウド
MJIR2025発表論文36本のキーワードを可視化したワードクラウド

最も多かったのは「IR」で、36本中17本に登場しました。次いで「アンケート」が9本、「AI・生成AI・LLM」が8本と続きます。

学生や卒業生を対象とした調査が大学IRの基本的な手法として定着していることは、「アンケート」の多さからも見て取れます。注目したいのは、それとほぼ並ぶ位置に「AI・生成AI・LLM」が現れている点です。「教学マネジメント」「可視化」「質保証」といった、この分野で長く語られてきた語よりも上位に位置しています。

Step 2: どのような手段が使われているか

次に、それぞれの論文がどのような手段を用いているかを整理しました。1本の論文が複数の手段を使うことも多いため、重複して数えています。

MJIR2025の発表論文が用いている手段別の論文数
MJIR2025の発表論文が用いている手段別の論文数

最も多かったのは質問紙・アンケート調査で、36本中14本にのぼりました。学生や卒業生に尋ねるという方法が、大学IRの土台であり続けていることがうかがえます。次いで、統計的な手法を用いる研究が10本、テキストデータを分析する研究が9本と続きます。

これらに続くのが、生成AI・LLMです。比較的新しい手段ですが、用いた研究は8本にのぼり、36本のうち2割を超えています。BIツールやダッシュボードによる可視化を扱った5本を上回る数です。

テキストデータを分析した9本に絞ってみると、そのうち4本で生成AI・LLMが使われていました。テキスト分析という領域に、生成AIが入ってきています。

IRにおける解釈と記述

生成AI・LLMを扱った8本を眺めていくと、AIが充てられている場面に共通点が見えてきます。評価文書の作成、自由記述の読み解き、制度文書の整理、答案へのフィードバック。いずれも、対象を解釈し、判断を加え、記述する業務です。

大学IRの業務を振り返ってみると、データを集めて可視化するところで終わることはほとんどありません。可視化された結果を解釈し、評価を加え、報告書や自己点検評価書として記述するまでが一連の流れです。そして、この後半の工程に時間がかかっている、という実感をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。

MJIR2025でAIが向けられていた先は、まさにこの解釈と記述の工程でした。

まとめ

本記事では、MJIR2025で発表された36本の論文を俯瞰し、キーワードと手段の分布、そしてAI関連発表の内容を整理してまいりました。

全体を眺めて見えてきたのは、質問紙調査という従来からの手段が変わらず中心にありながら、そこに生成AI・LLMという新しい手段が加わりつつあるという構図です。そしてAIが向けられていたのは、解釈と記述の工程でした。

解釈と記述は、多くの大学で担当者の手作業に委ねられてきた工程でもあります。IRQuAとしても、ここに貢献できるよう検討を進めているところです。

MJIR2026では、こうした流れがさらにどのように展開していくのでしょうか。本記事の整理が、当日の発表を追いかける際の手がかりとなりましたら幸いです。会場でお目にかかれることを楽しみにしております。